甘い恋にはお花をそえて

好きな子

「いらっしゃいませ!」

バイトが休みの日の朝、えいっと入った二度目のお花屋さんで私を迎えてくれたのは黒髪だけど短髪で、メガネがよく似合う男性だった。
山木さんの言葉を思い出すと、ご兄弟のお兄さんのほうだろうか。
にこりと微笑む顔は、確かになんとなく似てるような気もする。

お店の外から見ていたときにも、メガネをかけているのはぼんやりとは知っていたけれど、間近で見ると眩しいイケメンメガネ男子である。
サラサラ黒髪ヘアーの弟さんらしき店員さんは今日は不在のようで、ちょっとだけ残念な気持ちとほっとした気持ちでまだ自分の感情がよくわからない。

店内にはすでに一人年配の女性客がいて、接客中だったから私は店内をゆっくり見渡し歩いた。
またどのお花にするか迷うかな?と思ったけれど、今日は目が合ったピンク色のバラにすぐに心が決まる。
店員さんの手が空くのをお花を選んでいるふりをして待つものの、先客は常連様らしくなかなか会話が途切れそうにない様子だ。

今日はお花を諦めた方がいいかななんて思いはじめた頃、お店のドアが開いて思わず視線をそちらに向けた。
視界には、さらりと揺れる黒髪がスローモーションみたいに映った気がした。
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