【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
プロローグ


【頻発性哀愁症候群】ーーー度々、「寂しい」という感情に襲われる病。「寂しさ」の度合いは人それぞれだが、酷いと日常生活にまで支障を起こす。十万人に一人ほどの割合で発症する稀な病である。先天性の場合もあれば、後天性の場合もある。明確な治療方法はまだ無い。






 寂しい。





「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」





 寂しい。





 体育館に響く校長先生の声を聞きながら、私はスカートの裾をギュッと握りしめた。





 寂しい。





 「寂しい」が顔を出しても何も持ち込めない入学式では、ただただ耐えるしかない。どうか早く無事に入学式が終わってほしいと願うだけだった。
 来賓の方の紹介が終わる頃には、さらに「寂しい」が悪化していた。

「続いて、在校生の言葉を……」

 在校生代表の生徒が壇上に上がる。在校生代表の言葉にはもう集中できなくて、言葉が途切れ途切れに入ってくる。

「……皆さんが充実した高校生活を……願って……勉学に励み……」

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