【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「菅谷くん、菅谷くんの気持ちが全部分かるなんて言わないから……そんなこと言わないから…‥だって菅谷くんの本当の気持ちはきっと菅谷くんにしか分からないから……だから、教えて欲しい……」

 菅谷くんは気づいたら、もう顔を上げていた。ぼーっと涙でぐちゃぐちゃの私の顔を見つめている。

「川崎さん、俺が笑顔じゃくてもいいの?こんな病気でもいい……?」
「笑顔なんかじゃくていい……それに病気なのは私も一緒。『寂しがり屋仲間』」

 菅谷くんはしばらく何も言わなかった。私は涙を拭こうと、バッグからポケットティッシュを取り出す。それに気づいた菅谷くんがティッシュ箱を私の前に差し出してくれる。そして、そのまま私の隣に座った。

「川崎さん、ちょっと昔話してもいい?俺の中学の頃の話」

 菅谷くんの言葉に私は小さく頷いた。


 菅谷くんはカーテンの閉まっている窓を見つめながら、過去を思い出しているようだった。

「俺、中学の頃から友達が多い方でさ。部活の友達も同じクラスの友達もどっちもいたんだ。サッカー部の友達もクラスの友達も良いやつばっかで……まぁ草野見てれば分かると思うんだけど」

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