【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「誰も暗い部分の俺は求めてないって気づいたら、周りに誰もいない感じがした。それから『寂しい』って感情が頻繁に起こるようになったんだ。でも、ずっと認められなくて無理をし続けてた。それで入学式の時、ついに限界が来て川崎さんに出会ったんだ」

 菅谷くんが窓に向けていた視線を私に向ける。


「さっき川崎さんが言ってくれたでしょ。『笑顔じゃなくてもいい』って。入学式の日も今も俺を助けてくれるのはいつも川崎さん」


 菅谷くんの言葉は真っ直ぐで、嘘がなくて、そんな菅谷くんの苦しみにいま私は触れている。

「川崎さん、もう一回あの言葉言ってくれる?」

 私は涙を拭くことも忘れたまま、菅谷くんの方を向いてもう一度あの言葉を唱えた。


「寂しくない。大丈夫」


 菅谷くんが下を向いて、嗚咽(おえつ)を堪えているのが分かった。

「寂しいんだ。俺、本当に寂しい」

 泣きながら、菅谷くんはそう繰り返した。

「寂しくて息が出来ない」
「うん。私も寂しくていつもぬいぐるみと手を繋いでる」
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