【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「こんな症状のせいで高校では部活も入れない。本当に息が苦しくなるんだ。もう死ぬんじゃないかって不安になる」

 菅谷くんが何とか顔を上げた。

「川崎さん、でも俺、死ぬんじゃないかって不安になるってことは死にたくないのかな……?」

 菅谷くんの絞り出したような言葉に私は気づいたら菅谷くんの手を握っていた。ただ握ることしか出来なかった。

「川崎さん、また症状が出たら俺の手を握ってくれる?」

 震えた菅谷くんの問いに私は頷いた。拭いたはずの涙がまた頬に伝ったのが分かった。

 どれくらいそのまま手を繋いでいただろう。しばらくして、菅谷くんが立ち上がった。

「川崎さん、月曜日の授業に数学ってある?」
「……?確かなかったと思うけど……」
「やった。じゃあ、行こ」

 菅谷くんのその言葉がどれほどの勇気がいる言葉なのか私には想像もつかなかった。

「川崎さん、今日は本当にありがと」
「ううん、全然。また月曜日ね」

 「また月曜日」と言えることの喜びを噛み締めたかった。
 菅谷くんの部屋を出て、階段を降りると菅谷くんのお母さんがリビングから出てくる。

「川崎さん」
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