【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「班で出かける話さ、無理しなくていいから。川崎さんの病気の状態もあるだろうし、本当に無理しなくていいよ」

 菅谷くんが電話をかけてきてくれた理由に私はひどく安心してしまう。

「川崎さんはどうしたい?」

 菅谷くんの問いに私は返事が出来ず、黙ってしまう。

「やっぱり症状が出るのが怖い?」

 違う。症状が出るのが怖いのもあるけれど、一番は人と関わって周りの人に迷惑をかけることが怖かった。菅谷くんは私の返事が遅れたことで、私が症状が出ることを怖がっていると思ったようだった。

「川崎さん、もし出かけるのが嫌じゃないなら遊ぼ。症状が出たら真っ先に俺に言って。お互い助け合えば大丈夫だよ」

 菅谷くんの優しさにうまく返事が出来なくて。

「川崎さん?大丈夫?」
「あ、うん……ごめん」
「全然。俺の方が川崎さんに助けてもらってるし。今日、高校に行けたのも川崎さんのおかげ」
「ちがっ……!」
「ん?」
「それは菅谷くんが頑張ったからだよ。菅谷くんが勇気を出したから……」

 私の言葉に菅谷くんはしばらく何も言わなかった。しばらくして菅谷くんが少しだけ嬉しそうに笑った声が聞こえた気がした。
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