【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「なんで俺だけ呼ぶんだよ」
「女子に走れって言えないだろ」
「草野ってそんな気遣い出来るんだな」
「うるせー」

 菅谷くんはそう言いながらも、草野くんの方へ早足で向かっている。少し遅れて私と美坂さんは草野くん達に追いついた。

「わ!本当に綺麗」

 美坂さんがそう呟いたのが聞こえた。今日は晴れていて、何より川の後ろに見える橋や木々(きぎ)が綺麗にはっきりと見えていた。橋は青色のペンキで塗られていて、それがよく映えている。
 美坂さんはスマホを取り出して、その風景を写真に収めていた。草野くんもスマホで写真を撮っている。

木下(きのした)に送ろ」
「木下って二組のバスケ部のやつ?」
「そうそう。この場所教えてくれたから、来たって報告送ろうと思って」

 草野くんと美坂さんが写真を撮っているのを見ていると、菅谷くんが私のそばまで歩いてくる

「川崎さんは写真撮らないの?」
「私、写真のセンスなくて……」
「俺も」

 菅谷くんはその後は何も言わなくて。「どうして来れたのか」も「来れてよかった」も言わないでくれる。いつもの菅谷くんの優しさだった。
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