【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
二章

 それから高校に入学して、一週間が経った。あの日から菅谷くんとはまだ話せていない。今日も私は家の玄関で重い足に靴をはめ込んでいた。

「行ってきます」
「奈々花、大丈夫?友達は出来た?」
「うーん、多分作らないかな?迷惑かけちゃうし」

 お母さんにそう言いながら、自分の言葉に泣きそうになった。

「そんなことないわ。奈々花は優しいし、それに……」
「ううん、絶対にこれ以上他の人を巻き込みたくないの」
「そう……」
「お母さん、ごめんね。行ってきます」

 両親に謝らない日はなかった。高校の門をくぐって教室の入っても、明るい教室と自分は真逆で。

「おはよー!」
「おはよ!今日、英語小テストあるらしいよ」
「まじ!?早くない!?」

 教室に元気の声が行き交う朝。私は今日も一人で息を殺している。

「川崎さんもおはよう!」
「お、おはよう」

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