【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「そっか。川崎さんが美術部入ってくれたら嬉しいなって思って、ちょっと聞いちゃった」

 美坂さんはなんで帰宅部がいいかとかそんなことは何も聞かないでくれる。

「今ね、美術部に先輩も入れて11人しかいなくてね。小さい部活だから、みんな美術室で一人一個机使えるの」

 美坂さんは楽しそうに美術部の話をしてくれる。その話の中には今書いている絵の話もあって、それがとても眩しく感じた。

「今度は水彩画を描こうと思ってて……あ、ごめん。面白くない話しちゃった」
「ううん、楽しいよ。本当に」
「……」
「美坂さん?」
「川崎さんって絵が本当に好きなんだね」

 美坂さんはそう言って、嬉しそうに笑ってくれる。

「私の描いてる水彩画の話ね、この前クラスの友達にしたら、楽しそうに聞いてくれたけどすぐに別の話題に移っちゃって……なんか申し訳ない気持ちになったの。でも今の川崎さんがとっても楽しそうに聞いてくれるから、いっぱい話しちゃいそう」

 美坂さんの言葉に私はぎこちなく笑い返すことしか出来なかった。私の本心を見透かされた気がした。
 その時、菅谷くんと草野くんがトリックアート展から出てくる。

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