【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「ごめん、二人とも。遅くなった。菅谷と全部のトリックアート制覇しようぜって話になって」
「おい、言い出したのは草野だろ」
「菅谷もノリノリだったじゃん」

 草野くん達と合流して美術館を出た後も、美坂さんの言葉が頭に残ったままだった。
 バスで駅まで戻ると、もう時刻は3時を過ぎていた。草野くんもスマホで時間を確認している。

「まだ3時だけど、どうする?」
「俺は疲れたし、そろそろ帰りたいかも」
「確かに。今日は解散にするか」

 その時、菅谷くんがちらっと私の顔色を確認した気がした。きっと私の体調を気遣って解散しようと言ってくれたのかもしれない。

「じゃあ、また月曜な」

 草野くんと菅谷くんは電車なので駅の中に入っていく。美坂さんも駅から見て私と反対方向の家なので、その場で別れた。
 帰り道、一人になると急に寂しさが襲ってくる感じがした。症状というほど酷くはないけれど、どこか物寂しくて。きっとこれはさっきまでの時間が楽し過ぎたせいだ。
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