【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 何故か心臓が少し速くなったのが分かった。四人で遊びに行った日から部活の話に敏感になっているのかもしれない。

「いや、悩んでるんじゃないかも。入りたいのに勇気を出しきれないだけ。俺、小学生の頃からずっとサッカー部だったんだけど、この症状のせいで高校は部活を諦めるつもりだったから」

 菅谷くんの声色(こわいろ)はいつも通りで、声だけで菅谷くんの感情を読み取るのは難しかった。

「でも、やっぱり諦めたくないなって」

 私も菅谷くんと同じで病気の症状のせいで部活を諦めた部分もあって。でも菅谷くんとの大きな違いは、菅谷くんはちゃんと前に進もうとしている。
 「周りの人に迷惑をかけたくない」と思って、前に進めない私とは違う。ううん、本当は「周りの人に迷惑をかけたくない」っていう気持ちを言い訳にして、人と関わるのを避けているのかもしれない。
 それでも、菅谷くんを応援出来ないような人間にはなりたくなかった。

「菅谷くんなら大丈夫だよ。応援してる!」

 この気持ちも紛れもない本心だから、どうか伝わってほしかった。

「なんか川崎さんには弱音ばっかり吐いてるね」
「それは私も」
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