【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 川北先生は病気のことを知っている。きっと心配してくれているのだろう。

「変わらず……ですね。でも、病気にも大分慣れたので」

 「病気に慣れた」なんて悲しい言葉を吐きたくなんかないのに、その言葉は当たり前のように零れ落ちてしまう。先生はそれ以上は聞かずに「何かあったら相談してくれ。無理するなよ」と言って教室から離れていく。
 もう一度窓の外を見るとサッカー部は運動場の端に集まって顧問の先生の話を聞いている。私はすぐに窓の外から視線を外して、家に帰った。
 家に帰ると誰もいない。両親はまだ仕事から帰ってきていないようだった。お母さんは私の病気が分かった後に、夕方ごろには家に帰れる仕事に転職した。

「前の職場にも不満があったから、ちょうど良かったわ」

 転職した日にそう話したお母さんの言葉を今でも思い出すことが出来る。どれだけ迷惑をかけているか想像するだけで泣きそうになった。それでも結局オリエンテーションの最終日は平日なのに、家に帰ってお母さんがいることに安心した。


 寂しい。


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