【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「そうね、でも、今、奈々花の心は寂しいって悲鳴をあげてる。お母さんは、奈々花の悲鳴を抑えてあげることしか出来ない」

 お母さんが私を抱きしめながら、私の背中をゆっくりと撫でた。


「奈々花、大好きよ。本当に愛しているわ。ずっとずっと寂しいって言い続けてもいい。お母さんが何度だって、奈々花に愛を伝えてあげる」


 声にならないほど涙が溢れていくのが分かった。

「全然、病気も良くならないっ……!」
「奈々花、大丈夫。焦らなくていいの。奈々花は奈々花なりのペースで進めばいい」

 お母さんが私の背中をトントンと優しく叩いてくれる。「私なりのペース」ってなんだろう?
 気持ちばかりが焦って何も出来ていない気がしてしまう。

「お母さん……私、少しは進んでる?」
「ええ、絶対進んでるわ。だって、笑顔を増えたもの。高校に行く時も前よりずっと嫌そうじゃなくなった」

 私は自分が気づいていないだけで、笑うことが増えていたのだろうか。
 お母さんは私が泣き止むまで私を抱きしめてくれていた。しばらくして、私は顔を上げる。

「ごめん、お母さん。もう大丈夫……」
< 137 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop