【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「うーん、今のところ大丈夫だと思うけれど……朝の天気予報も曇りだった気がするし」
「そっか」

 お母さんに大丈夫と言われてもどこか心配で空を何度も確認してしまう。

「奈々花、着いたわよ」

 時計を確認すると、まだ「10:40」だった。でも15分前には席を取っておいた方が良いと言っていたし、丁度良いくらいだろう。

「じゃあ、行ってくるね」

 私がそう言うと、お母さんが「行ってらっしゃい」と言ってくれる。お父さんも「楽しんでおいで」と付け足した。
 サッカー場に入るともう人がパラパラといたが、生徒の保護者が多そうだった。私は屋根の下で試合がよく見えそうな場所に座る。私は美坂さんの分の席を取るのも兼ねて隣の席にバッグを置いた。まだ全然席は空いていて、みんな好きな席を選んでいる。
 その時、近くにいた子供が「あ!雨降ってきた!」と大きな声で言った。私を含め周りの人たちがパッと空を見上げる。その時、腕にポツッと水滴が当たったのが分かった。ポツポツと雨が降り始める。
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