【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 誰もいない施設の中はよく私の声が響いてしまう。いつも通り心の中で「寂しくないよ。大丈夫」と唱えながら、自分で自分を抱きしめるように腕をギュッとする。
 寂しいと一度感じてしまえば、時間が経つのがあまりに遅く感じてしまう。嫌な時間は長く感じるとよく言うけれど、まさにその通りだと思う。


「川崎さん!」


 突然、名前を呼ばれてビクッと自分の身体が震えたのが分かった。

「川崎さん、大丈夫……!?」

 顔を上げると、菅谷くんがこちらに走ってきている。ユニフォーム姿のままで、慌ててきたようだった。

「菅谷くん、なんで……」
「川崎さんが15分前に来るって言ってるのに、まだ来てないって言うのが引っ掛かって。もしかして遠慮してるのかなって、一応確認に来たら案の定だった」

 菅谷くんに拙い嘘がバレていたことがどこか恥ずかしくて、私はすぐに話題を変えた。

「菅谷くん、部活は……?」
「雨でもう今日は解散になった。草野も謝ってたよ」
「それは全然大丈夫。雨なんて草野くん達のせいじゃないし」

 菅谷くんは走ってきた息を整えている。

「川崎さん、隣座っていい?」

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