【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 その時、ピコンとスマホが鳴った。班のグループに草野くんからメッセージが入っている。

「練習試合、中止じゃなくて延期になった!今週の土曜!」

 私はすぐに「前と同じ場所?」と聞いた。

「そう!でも、急だし来れなかったら無理しなくて大丈夫」
「ううん、行くよ。見に行きたい」

 私の返信の後に美坂さんも「私も行けそう!」と返している。私はスマホのカレンダーに今週の予定を書き込んだ。

[サッカー部の練習試合観戦]

 前まで予定を入れたのに行けなくなるのが怖くて、カレンダーに打ち込むことも出来なかった。小さすぎる成長。それでも、それが涙が出るほど嬉しかった。
 もう一度、目の前の絵に視線を向ける。まだ制作に長時間がかかる絵を描くことは出来ない。だって、症状が出るのが怖い。中学の頃の「寂しさ」を思い出したくなかった。それでも、ちゃんと一枚絵を描きあげた。そのことも事実で。

「焦らないようにしないと……」

 焦ってしまえばきっと良い絵は描けないし、症状も出やすくなる。私は机に散らばっている色鉛筆を片付けた。

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