【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 美坂さんがスマホでサッカーのルールを調べている。美坂さんが画面を私の方に向けて「川崎さんも一緒に見よ!」と言ってくれた。ゴールを決めたら点が入るとか当たり前なことは知っているけれど、もう少し細かなルールにも目を通しておく。
 その時、アナウンスでまもなく試合が始まると流れた。コートには選手が入ってきてチームごとに集まっている。

「川崎さん、あの人、菅谷くんじゃない?」

 美坂さんの指を差す方を見ると、5番のゼッケンをつけた菅谷くんがコーチの話を聞いている。美坂さんが「あ!草野くんも見つけた!」と言って、私に場所を教えてくれる。
 その時、選手たちは一斉にチームごとに並び始めた。もうすぐ試合が始まろうとしていた。


「今、いい感じじゃない?あー!惜しい!」

 美坂さんはサッカー観戦に慣れていないながらも、楽しみながら見ていて微笑ましくなってしまう。私も菅谷くんと草野くんという応援する選手がいるおかげもあって、見ていてとても楽しかった。
 前半戦が終わった時には、応援している私たちも汗をかいていた。点数はまだ0対0のままだった。

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