【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 看護師さんはいつも通り優しくて、私はつい言葉を溢してしまった。

「……あと、絵を一枚描きました。久しぶりに……」

 看護師さんは私の話し方で何かあることを察したのだろう。詳しいことは聞かずに私に微笑んだ。

「私、絵を見るのも好きなの。もし奈々花ちゃんが良かったら、今度その絵を見せてくれないかな?」

 その言葉にドッと心臓が速くなったのが分かった。

「もちろん嫌だったら無理しなくていいから」

 その言葉に私は何とか笑顔で頷いた。絵を見せたくない訳じゃない。久しぶりに言われた言葉に戸惑ってしまっただけ。それでも、心臓の音はどんどん速くなっていく。
 看護師さんと別れたあとに会計を済ませて病院を出ようとすると、エントランスに大きな絵が飾ってある。いつも病院に飾ってあって見慣れているはずなのに、何故か立ち止まってつい見てしまう。
 知らない画家の絵。それでも、見ているだけで楽しくて。

 本当はずっと絵が描きたかった。一枚だけじゃなくて、もっと沢山。

 それでも誰にも止められていないのに、許されていない感じはなくならなくて。

「川崎さん、俺ら二人とも『絶対大丈夫』だよ」

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