【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
二十二章
 それから入部まではあっという間だった。

「ここの机が空いてるから川崎さんが使ってね。それと画材は……」

 美術部顧問の木下(きのした)先生が私に部室の説明をしてくれている。その説明を美坂さんと一緒に聞いていた。

「川崎さんの場所、私の隣だね。私に分かることなら何でも聞いて……!」

 美坂さんは私が美術部に入ってくれたことが嬉しいようで、いつもよりどことなくテンションが高い気がした。木下先生が美術部の他の部員を見渡した後に、私に視線を向けた。

「まずは美術部に入って初めての作品になるけど、どうしたい?今は他の部員たちはアクリル絵の具を使った絵を描いてるけれど……」
「じゃあ、私もそれで大丈夫です」
「そう。丁度、いまコンテストもやっていて皆んなそれに向けて頑張ってるの。川崎さんは初めての作品だから、コンテストに応募するかは自由にしてね」

 「コンテスト」という言葉に一気に緊張感が走ったの分かった。中学の頃の記憶が頭をめぐる。

「コンテストはまだやめておこうかな……」

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