【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「良かった。新入生オリエンテーションもあるから心配してたんだよね」
「あ……私はオリエンテーションは……」
「ん?」

 菅谷くんの言葉でオリエンテーションを休むことがどれだけ不自然かが分かった。理由を明かさないならなおさら。

「そうだね、オリエンテーション楽しまないと」
「おう!」

 同じ「寂しい」という感情に悩まされている菅谷くんはオリエンテーションに頑張って参加するというのに、私は参加もせずに、そしてクラスメイトに理由すら誤魔化そうとしている。
 それでも、病気のことは明かしたくない。

「菅谷くん、何かあったらいつでも言ってね」
「……ありがと。川崎さんも」

 入学式という輝かしい門出に小さくうずくまっていた生徒二人。私達はどんな高校生活を送っていくのだろう。

 その日の夜、私は両親に呼び止められた。

「奈々花、新入生オリエンテーションのことだけど、休むならそろそろ先生に連絡しないと……」
「……明日まで考えてもいい?」
「え?」

 両親はきっと私が休むと言うと思っていたのだろう。

「いいけれど……大丈夫なの?」
「うん、ちょっとだけ考えたくて……」

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