【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「美術部の題材探しで……菅谷くんは?」
「ちょっとさっき転んでさ、保健室行った来たところ」

 菅谷くんは自分の膝の辺りにある絆創膏を指差した。

「わ!大丈夫……!?」
「全然。大した傷じゃないから」
「そっか。良かった」
「川崎さんは、なんか良い場所見つかった?」
「まだ……」

 私の言葉に菅谷くんが私の隣に来て、運動場を見渡す。

「こうやって見ると運動場の景色も綺麗だな。お、草野も走ってる」

 菅谷くんは草野くんが走っているのを見つけて楽しそうに笑う。

「川崎さんさ、もし良かったらサッカー部を描いてよ。もちろん嫌だったら全然いいけど」
「……?」
「俺さ、最近ふと思ってさ。これから病気が治る可能性もあるけど、酷くなる可能性もゼロじゃない。だからこそ、今こうやってサッカーが出来ることを楽しみたくてさ」

 菅谷くんは運動場で頑張っている部員を輝いた目で見ている。

「もしいつか出来なくなっても、川崎さんが絵に残してくれたら嬉しいかもって思っちゃった。あ!そうじゃん!」

 菅谷くんが急に私と顔を合わせた。

「そしたら、俺のサッカーと川崎さんの絵が同時に残るじゃん!」

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