【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 菅谷くんはそう言った後に、慌てて「もちろん川崎さんが好きなものを描けばいいんだけど」と訂正してくれる。でも、私は今の菅谷くんの言葉が嬉しかった。心に響いてしまった。

「それにする」
「え……?」
「私、ここから見える景色を描くね」

 私がそう言って笑うと、菅谷くんがつられて笑った。

「完成したら見せてよ」
「うん」

 その時、運動場にいるサッカー部の部員の先輩らしき人が菅谷くんに気づいたようだった。

「おーい、菅谷ー!怪我大丈夫だったかー!」

 菅谷くんは「ごめん、戻る!」と言って、すぐにサッカー部のところに戻っていく。私は菅谷くんがサッカー部のところへ走っていくのをつい見つめてしまう。

「うん、ここにしよ」

 私はもう一度そう言って、部室に戻った。
< 171 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop