【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
二十三章

 次の日、私はカメラとキャンバスを持って昨日の場所に向かった。まず、カメラで描きたい景色を10枚ほど写真に収める。雨の日やこの場所に来れない時は、写真を見て描けばいいだろう。

 そして持ってきたレジャーシートを小さく折りたたんで、そこに座って下書きを始める。鉛筆で下書きをする時が昔から好きだった。消しゴムを使って何度も消して、一番上手く描けた時を残す。その時間が楽しくて、時間はあっという間に過ぎてしまう。
 帰る時間になって、部室に戻ると美坂さんが私に駆け寄ってくる。

「川崎さん、描く場所決まったの?」
「うん。サッカー部の練習風景を書こうと思って」
「え!じゃあ、菅谷くんと草野くんも描けるね……!」

 美坂さんは「私も今日結構進んだの。見て!」と言って、机に置かれている絵を見せてくれる。

「美坂さんは滝の絵を描いてるんだ」
「そう!この場所、私の近所でね。とってもお気に入りの場所」
「そうなんだ。綺麗な場所だね」
「でしょ!」

 絵の話をしている時の美坂さんはいつもテンションが高くて、微笑ましかった。

「川崎さんの絵も完成したら見せて!私も完成したら見て欲しいし!」

 私は美坂さんの嫌味のない素直な言葉にいつも救われている気がする。だからこそ私は「もちろん」と笑顔で返した。

「川崎さん、美術部入って良かったでしょ?」

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