【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 美坂さんが自慢げにニコッと笑った。その笑顔が可愛くて、自分の好きなことをしている人はこんなにも輝いているのだと実感した。

「うん、入って良かった!」

 そう言った私はどんな顔をしていたのだろう?
 でも、きっと笑顔だったと思う。だって、いま美術部に入って良かったと心の底から思っている。

「今、川崎さんが隣で絵を描いてるでしょ?川崎さんが美術部に入ってくれるまで、私の隣の席は空いてたの。それが今埋まっているのが、なんか不思議な感じ!」

 美坂さんの「不思議な感じ」が嫌な意味じゃないと分かるから、私はつい嬉しくなってしまった。

 その日の夜、菅谷くんからメッセージが来ていた。

「今日、もう描き始めてたね。川崎さんが運動場の隅にいるの見えた」
「うん、ゆっくり描くつもりだから二ヶ月ぐらいかかるかも」
「二ヶ月って長いの?」
「人それぞれだしそんなことはないと思うけど、私にしたら長い方かも。それにキャンバスも大きめだから」
「確かに大きかった!川崎さんの顔隠れて見えなかったし(笑)」

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