【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
二十四章
美術部に入って、二ヶ月弱。その日、私は病院に来ていた。
まだ菅谷たちを描いた絵は完成していなかったが、もうすぐ出来上がりそうなその絵を今日はスマホの写真に収めてきていた。
「えー!とっても上手ね!びっくりしちゃった!」
看護師さんが私の絵の写真を嬉しそうに見てくれている。流石にキャンバスは持って来れないので、写真を撮ることにした。
「これはサッカーの試合よね?奈々花ちゃんの高校のサッカー部?」
「はい。友達がいて……」
初めて「友達」と言えた気がした。
「そうなの?どの子?」
私は絵の中の菅谷くんと草野くんを看護師さんに教えると、看護師さんは楽しそうに笑っている。
「いいわね。奈々花ちゃんにしか出来ない楽しみね」
「……?」
「だって、こんなに上手に絵を描ける人ってそんなに多くないわよ?私だって描けないもの。こういう楽しみがあることも素敵なことだわ」
看護師さんは私のスマホに映し出された絵を感心したように見ている。
「これはどんなコンテストに出すの?」