【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
二十五章
 
 数日後、私は最後の仕上げで細い筆を持っていた。気になったところを直していく。

最後にキャンバスから少し離れて自分の絵を見てみると、もう手直ししたいところは残っていなかった。

「完成……」

 私がそう呟いたのを聞いて、美坂さんが立ち上がった。

「出来たの……!?見ていい?」
「うん」

 私の絵を美坂さんがじーっと静かにしばらく見ていた。

「うん、めっちゃ素敵!私、やっぱり川崎さんの絵が大好き」

 美坂さんが子供のように、はしゃいでいるのが可愛かった。

「今日の部活が終わったら、菅谷くんと草野くんを呼んでもいい?絵を見せたくて……」
「もちろん!モデルの二人だし」
「じゃあ、部活終わり呼ぶね」
「うん。私も一緒に残ろっと」

 美坂さんの言葉に私はつい嬉しくなってしまう。四人が揃うのは、夏休みが始まってから初めてだから。それから部活が終わるまでの時間は、いつもよりずっと長く感じた。

 部活が終わて他の部員が帰った後に、すぐに菅谷くんと草野くんに連絡を送った。わずか5分ほどでパタパタと廊下から走ってくる足音が聞こえてくる。

「絵が完成したの!?ていうか、この部屋涼し!」

< 184 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop