【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 お母さんは昔から心配性だったわけじゃない。私が病気で何度も泣いているのを見ているうちに少しだけ変わってしまった。
 お母さんを心配性にしたのも、お母さんを心配させているのも、自分のせいだと思うとただただ申し訳なくて。
 少しだけ見栄を張った言葉を吐いてしまう。

「お母さん、ちゃんと『楽しかった』って言えるように頑張ってくる」

 それでも、その言葉にお母さんは心底嬉しそうに笑ってくれるのだ。
 その日はまだオリエンテーションの前日ではなかったのに、まるで遠足の前の日みたいにどこかソワソワしてあまり眠れなかった。
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