【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「オリエンテーションってゴミ拾いあるんでしょ?めっちゃ嫌ー」
「でも、ゴミ拾い海辺らしいよ」
「マジ!?海入れるってこと!?」
「流石にそれはないでしょ。まだ四月の半ばだよ?冷たくて死ぬって」

 私は会話に参加していないのにクラスに飛び交う声を聞くだけで、もう目の前までオリエンテーションが迫っていることを実感する。そんなクラスの光景を眺めていると後ろから声をかけられていることに気づかなかった。

「……きさん……川崎さん?」

 トントンと肩を叩かれながら名前を呼ばれて、私は慌てて振り返った。斜め後ろに美坂さんが立っている。

「ごめん、驚かせちゃったかな?川崎さんにオリエンテーションのことで聞きたいことがあって……海だからちょっと濡れても良い服って持っていく?」
「海に入る様っていうか……着替えは汚れることもあるだろうから、多めに持っていくつもり……」

 クラスメイトと話し慣れていない私は、ハキハキと話せなくて小さな声で返事をした。美坂さんはそんな私の小さな声を気にもせずに頷いてくれる。

「やっぱり持ち物には書いてないけど、要りそうだよね。教えてくれてありがと!」

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