【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
五章

 オリエンテーション当日。時計はいつもより30分早く目覚ましを鳴らした。高校の前に7時半集合なので、いつもより早く起きなければ間に合わない。

 朝ご飯を食べた後、いつもの制服ではなく今日は体操服に着替える。スクールバッグより大きな荷物を持つと、一気に今日がオリエンテーション当日だという実感が湧いた。
 大きな旅行用のバッグには、いつもの教科書とは違って着替えやタオルなどが大半を占めている。それと、いつも持っているぬいぐるみを入れてある。スクールバッグの三分の一ほどの大きさだったぬいぐるみは、旅行用のバッグに入れると小さく感じる。
 最後に部屋のタンスの上に並んでいる小さなな沢山のぬいぐるみの中から、小さな薄茶色のくまのぬいぐるみを体操服のポケットに入れた。教室と違ってスクールバッグを自分の机にかけて置くことは出来ない。手のひらサイズのぬいぐるみをポケットに入れておくことも必要だろう。
 そして、部屋を出る前に私は大きく深呼吸をした。

「よし!」

 部屋を出て玄関に降りると、お母さんがリビングから出てくる。

「もう行くの?気をつけてね。もし何かあったらすぐに連絡して。それと……」

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