【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
六章
キャンプ場に着くと、すぐに班ごとに調理を始めていく。
「なぁ菅谷、玉ねぎって縦に切る?横に切る?」
「玉ねぎの向きによって違うかな」
「そんなことは分かってんだよ!今の俺の持ってる向きで聞いてんの!」
菅谷くんと草野くんが玉ねぎを切ってくれている間に、私たちは人参とじゃがいもを切っていく。隣で玉ねぎを切っている草野くんが目を押さえている。
「痛った。マジで玉ねぎって目が痛くなるんだな」
「玉ねぎ切ったことねぇのかよ」
「記憶にはないかな」
「じゃあ、ないだろ」
いつもクラスで見ている菅谷くんより少しだけ草野くんを適当にあしらっている感じが二人の仲の良さを表しているようだった。それに菅谷くんも体調が悪いようには見えなかった。
「杞憂《きゆう》だったかな……」
私の声に美坂さんがこちらに視線を向ける。
「川崎さん、何か言った?」
「ううん、なんでもない。お米の準備してくるね」
「じゃあ、もう一人誰か……」
「ううん、一人で大丈夫」
私はそう言って、お米を洗うために手洗い場へ向かった。
お米を洗おうと水を出した瞬間、スッと症状が顔を出したのが分かった。
寂しい。
あ、これダメなやつだ。
私はすぐにポケットに入っている手のひらサイズのぬいぐるみを取り出した。小さいぬいぐるみでは手を繋ぐことは出来ないので、ぬいぐるみ全体を包み込むように手で握る。