【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「菅谷くん、私ね。『頻発性哀愁症候群』っていう病気なの。『寂しい』っていう感情に振り回される変わった病気」


 菅谷くんは私の言葉にしばらく何も言わなかった。それでも、しばらくしてポツポツと言葉を吐き出してくれる。

「川崎さんさ、入学式の日に俺に会ったこと覚えてる?」
「うん……」
「あの日、川崎さんは『最近寂しくて、おかしい』って言った俺にその病名を呟いたんだ。俺はその病気を知らなかったけど、家に帰って調べて『あ、絶対これだ。俺はこの病気なんだ』って思った」

 菅谷くんは私に向けていた視線を逸らし、下を向いてしまう。

「俺、認めたくなくて……」

 弱々しいその声は初めて聞いた菅谷くんの弱音だった。

「病院に行った方がいいのは分かってるのに足は動かないし、誰にも言えない。川崎さんにも相談しようって思ったけど、いざ川崎さんの顔を見るとつい無理してしまって……俺、もう癖になってるんだと思う。嘘笑いも、無理することも」

 菅谷くんは顔を上げないまま、絞り出すように声を出した。



「寂しい。死にたいくらい寂しい。俺、絶対におかしい」



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