【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 菅谷くんは周りに心配をかけないためだけに、無理をするためだけに「大丈夫」を使ってきたのだ。
 私は菅谷くんの手を握る両手に力を込める。


「菅谷くん、大丈夫だよ」


 どうか、この「大丈夫」が菅谷くんの「安心」になりますように。それだけを願いながら、私は菅谷くんの手を握り続けた。
 
 どれくらい経っただろう。しばらくして、菅谷くんが立ち上がった。

「ありがと、川崎さん。もう大丈夫。本当に!」

 菅谷くんのその「大丈夫」は何故か信じられた。

「ねぇ、川崎さん。また俺の話聞いてくれる?」

 菅谷くんのその言葉が……菅谷くんが頼ってくれたことが嬉しくて、私はすぐに頷いてしまった。

「さ、そろそろ部屋に戻ろ」

 そう言って、私の前を歩き始める菅谷くんの後ろ姿はまだ弱々しいのに、私はそれ以上菅谷くんに何も声をかけることは出来なかった。
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