【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した

 その週の土曜日は朝からどこか落ち着かなくて、スマホを何度も開いてしまう。
 時計の針が11時半を過ぎた頃。スマホに菅谷くんからメッセージが入った。

「頻発性哀愁症候群だった」

 その短い一文を見ただけで、私は息が苦しくなるのが分かった。
 言葉は見つからないのに、菅谷くんの話を聞きたくて……ただの私の自己満足かもしれないと分かっているのに気のきいた言葉を探してしまう。
 それでも言葉が思いつかない。菅谷くんが今、何を考えているのか分からない。何を感じているのか知らない。
 既読をつけたまま、しばらく返信を返せない私より先に菅谷くんから次のメッセージが届く。

「川崎さん、今何してる?」

 菅谷くんの言葉の意図が分からないまま、私は「家でゆっくりしてた」と返した。

「今から川崎さんの家の近くに行ったら、会える?」

 空気が読めて、周りを気遣ってばかりの菅谷くんが「急に会いたい」と誰かに言うことは珍しいだろう。それほどまでに今は苦しいのだろうか。
 私はすぐに「会える」と返して、家の近くの公園を集合場所に指定した。
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