【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
「そっか。ありがと」

 菅谷くんはそう言って、立ち上がった。

「今日はごめんね。急に呼び出して」

 その菅谷くんの言葉はきっと解散の言葉で……分かっているのに、心配で離れることが出来ない。

「川崎さん?」
「あ、あの!私、今日一日とっても暇だから!」

 私の勇気を出した言葉に菅谷くんは「ありがと」ともう一度お礼を言う。
 違うよ。私、何もお礼を言われることをしてない。何も菅谷くんの力になれていない。

「ごめん、菅谷くん」
「え……?」
「いや、私、全然役に立ってないから……」

 私がそう小さく呟くと、菅谷くんが私に一歩だけ近づいた。

「川崎さん、俺が一番症状が辛かった日、いつだと思う?」
「……?」
「オリエンテーションの一日目の夜、川崎さんと宿舎の庭で会った日。あの日、川崎さんがいてくれたから、あの後に部屋に戻っても眠ることが出来たんだ」

 菅谷くんはそう言って、いつもクラスの中心にいる時のような明るい笑顔を見せてくれる。

「川崎さんは役に立ってるよ。大役立ち」

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