【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 菅谷くんが無理をしていないか、たまに視線を向けても菅谷くんの本当の気持ちを読み取ることは出来なくて。
そんなことを考えている内にグループ提出用の紙が書き終わり、それぞれ自分の机に戻って個人の感想を書いていく。
 オリエンテーションの四百字程度の感想にまとめる課題だった。こういう感想を書くのは苦手じゃない。ありきたりな言葉を並べれば、四百字を埋めることはそんなに難しくない。

「このオリエンテーションのグループ活動を通して私は-----------------」

 いつも通りありきたりな言葉を並べていく。嘘ではないけれど提出するために内容を難しめに書いたような言葉。それでも、書いていると楽しかった思い出が頭の中によぎるのだ。
 私は草野くんや菅谷くん、美坂さんに直接「楽しかった」とは言えなかった。それはきっと心の中心に「誰かと親しくなれば、その人に迷惑をかける」と思っているから。
 それでも、この紙にくらい少しだけ本心を書いて良いだろうか。どうせクラスの誰にも読まれない。先生が求めていそうな頭の良さそうな文章ではなくなるけれど……私は感想の最後の方に一番の本心を混ぜた。

< 75 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop