【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
十一章
 その日は、五月の中旬にしては蒸し暑い日だった。その日の午後は、オリエンテーションの振り返りを兼ねた学年集会が行われていた。体育館で学年主任の先生がマイクを持って話している。

「……新入生オリエンテーションも終わり、六月の半ばには中間テストもあります。テスト前に焦るのではなく、今から予習復習をしながら……」

 きっと生徒の多くが「早く終わらないかな」と思っているような耳が痛くなる話。早く終わって欲しいと思っている生徒は多いだろうけれど、きっと私と同じ理由で終わって欲しいと思っている人はいないだろう。
 学年集会でスクールバッグを持ってくる人なんていない。つまり、いつもバッグに入れているぬいぐるみも持ち込めない。
 オリエンテーションの時に持って行った手のひらサイズのぬいぐるみを制服のポケットに入れようと思ったが、手のひらサイズでも学年集会でぬいぐるみを握りしてめいたら隣の人にバレてしまう。
 学年集会などの静かな場所は症状が出やすいのに、目立つのが嫌な私には一番出て欲しくない場所。



 寂しい。



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