【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
一章
「寂しい」

 中学二年生の時、その感情は突然襲ってきた。
 美術部の部活から帰って疲れていて、明日だって学校がある。それでもある日、急に「寂しくて」眠れなくなった。

その日から、私の生活は段々と壊れていった。

「お母さん、今日何時に帰ってくる?」
「うーん、今日は八時くらいだと思うけれど……」
「八時!?」
「ええ。どうしたの?何かあった?」
「ううん、何にもない……」

 どれだけ強がっても中学から家に帰って一人でいると、涙が溢れた。


「寂しい」

「寂しい」

「寂しい」


 今まで普通に流してきたはずの「寂しい」という感情があまりに強くて、私はついにネットで症状を検索した。


【異常なくらい寂しい】


 表示された病名はあまりにそのままで、それでいて何処かしっくりきた。


【頻発性哀愁症候群】


 信じられなくても症状は治らず、ついには家族に気づかれた。ある日、お母さんが夕飯の後に私を呼び止めた。

菜々花(ななか)、最近何かあった?」
「え……?」
「最近、いつもと違う気がして……」

 震えた手で、病名の検索された画面を親に見せた。

「最近、おかしいの。寂しくて堪らないの。本当に私、おかしくなっちゃった……」

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