【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 男子生徒がそう聞いたのを、川北先生が「今、説明するから座れ」と注意している。
 全員が席につくと、川北先生が軽く菅谷くんについて触れた。

「菅谷は倒れて病院に搬送されたが、もう意識も戻って大丈夫だそうだ」

 誰かが「熱中症ってことー?」と先生に聞いている。

「そこまではまだ分からない。それに関してはまず個人情報だしな。先生の口から説明するつもりはない」

 川北先生の言葉に生徒たちは口々に話し始める。

「絶対熱中症じゃん」
「菅谷、大丈夫かな」
「熱中症は大丈夫じゃねーだろ」

 川北先生は「静かに!」と生徒たちを注意した後、帰りのホームルームを始めた。
 帰りのホームルームが終わった後も、私は席を立つことが出来なかった。次々と教室からいなくなっていく生徒たちを呆然(ぼうぜん)を眺めていた。

 どうして声をかけなかったの?

 学年集会がこの病気の人には辛いって知ってたでしょ?

 自分だけが辛いとでも思っているの?

< 80 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop