【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 そこからはあっという間に「頻発性哀愁症候群」を発症した。その後、中学校も休むことが多くなり、部活は自然に行かなくなった。
 周りから見れば、小さすぎる出来事。それでも、私に取っては大きすぎる出来事だった。
 「悩みは人それぞれ」とよくいうけれど、まさにその通りだと思う。周りから見れば大したことのない出来事に私の人生は壊れていった。

 思い出したくない昔話から私を戻してくれるように、一階からお母さんの声が聞こえる。

「奈々花ー、起きてるー?朝ごはん出来たけれど、もう食べられる?」
「はーい!」

 もう一度時計に目を向けると、七時前を指していた。中学の時を思い出しながら、少し眠っていたのかもしれない。
 私は一階に降りて朝ご飯を食べ終えた後に、出かける準備を済ませる。
 菅谷くんが送ってくれた家の住所をスマホで調べると一駅先だった。電車の時間から逆算して家を出る。駅までの道のりは見慣れた道のはずなのに、どこか見慣れていないような不思議な感覚に(おちい)った。


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