【長編】寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
 私が入る前に菅谷くんが部屋の扉を開けてくれる。出てきた菅谷くんは、風邪を引いているかのように体調が悪そうだった。

「大丈夫……!?ベッドに横になったままでもいいよ!」
「ううん、大丈夫。ありがとう」

 いつもより菅谷くんの「ありがとう」が多い気がした。きっとそれは菅谷くんなりの防御なのかもしれない。
 私は菅谷くんの部屋に置かれているローテーブルの隣に座らせてもらう。菅谷くんはローテーブルの反対側にゆっくりと腰掛けた。

「川崎さん、急に呼んでごめんね」
「ううん、それは全然大丈夫けど……本当に体調大丈夫?」
「……えっと……」
 
 「大丈夫」と口癖のようにいつも無理をする菅谷くんが「大丈夫」と言えないほど体調が悪いのだろう。

「頻発性哀愁症候群のせいだよね……」

 ポツッとそう呟いた私の声に菅谷くんは体育座りで丸まるように顔を(うつむ)けた。


「俺、もう壊れたかも……」


 菅谷くんの壊れるはもう過去形で、その言葉に胸がギュゥっと苦しくなって目が潤んでしまう。

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