日々、アオハル
後輩たちへの感謝と激励を述べた光希は、次の部長である近衛くんに4番のユニフォームと共にバスケ部の未来を託した。
これまで二度、先輩たちを見送ってきた。昨年は先輩からユニフォームを託される光希の姿を後ろから見ていた。あの時は先輩たちがいなくなってしまう寂しさでいっぱいで光希の背中がぼやけて見えたけど、今年は託す立場の光希の姿をしっかりと見守ることができた。
再び体育館中が拍手に包まれる。
部長として最後の役目を終えた光希がその場で回れ右をする。帰ってくると思いきや、こちらに顔を向けたまま動こうとしない。――と、周りにいた三年生もぞろぞろと歩き出し、光希の横へと並び始めた。
「えっ……?」
この状況に頭の追いつかない私は、一人、困惑の声を上げる。私の周りには誰一人立っていなくて、一対数十人で向かい合うという構図が出来上がっているからだ。
「羽森雛夏さん」
真正面にいる光希が私の名前を呼んだ。固まったままの私を見て、少し照れくさそうに笑う光希は口を開いた。
「マネージャーとして、今まで俺らのことを支えてくれて、ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
体育館中に木霊するたくさんの声。頭を下げる皆の姿が大きく、大きく歪む。