日々、アオハル

「来週の東北大会、ひなは行くの?」

「……え?」


引退式の帰りの電車。四人がけのボックス席。正面に座る光希は、薄暗くなった窓の外の景色に目を向けたまま「柊の応援に行かねーの?」と言葉を続けた。


私たちの引退が決まった県大会で白石東は準優勝。東北大会という大きな舞台へと駒を進めていた。


柊くんにおめでとうの言葉を伝えたかったけど、県大会の日はタイミングが合わず、かといって連絡をするのも憚れてしまって。


「行く予定は、ないよ」


祝福の言葉を伝えたいとは考えていたけど、応援に行くという選択肢は私の中になかった。


その答えに「は?」と窓の外から正面に顔を向け直した光希は「なんでよ」と眉を顰めた。


「なんでって言われても……」

「俺は行こうと思ってる」

「え、そうなの?」

「白石東の応援にってわけではないけどな。大学でもバスケ続けたいから勉強がてら見学。近くでやんのに行かないってのももったいねーし」


今年の東北大会は、県大会が行われた総合体育館と同じ場所で行われる。東北中のバスケ強豪校が我が県に大集合するのだ。
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