日々、アオハル


✩࿐⋆*


月曜日の放課後。女子トイレの鏡の前で私は一人、格闘していた。何度も何度も前髪にコームを通し、淡いピンクの色付きリップを丁寧に塗っていく。


「(大丈夫かな……、)」


鏡とにらめっこしていたところ、ブレザーのポケットに入れていたスマホが小さく振動した。


【校門の前に着いたよ】


柊くんからのメッセージに、小さく胸が鳴った。


柊くんと付き合うようになって2日。ずっと頭がふわふわした状態で、正直今日の授業はちっとも頭に入ってこなかった。


柊くんの彼女になれたことが本当に嬉しくて、あの日のことを頻りに思い出しては、心の中でにまにまとしていた。


心の中に留めていたはずのにまにまが不覚にも顔に出ていたようで、ふーことあっちゃんに何度も突っ込まれてしまった。


ふわふわ、にまにま、ふわふわ。完全に浮かれてしまっている。


今日の放課後は柊くんが私の学校までお迎えに来てくれて、一緒に帰る約束をしていた。


今のは私は、お花畑全開の恋する乙女状態なので、できるだけ "かわいい" 状態で柊くんと会いたいと思っている。だから柊くんが到着するまでの間、何度も何度も、鏡とにらめっこをしていたのだ。


吹奏楽部は運動部よりも引退の時期が遅く、ふーことあっちゃんは今日も部活に励んでいる。


本当にこの姿で柊くんに会っても大丈夫か不安だけど、柊くんを待たせるわけにはいかない。


最後にもう一度コームを全体に通して、「よし…!」と気合いを入れて校門へと向かった。
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