日々、アオハル


好きな人と一緒に下校することは、密かに憧れ続けていたことだった。体育祭のハチマキに続き、無理だと諦めていた夢がひとつずつ叶っていく。


普段歩き慣れた駅までの道のりが、今日は全く違う景色に見えるから不思議だ。


緩やかに下る坂道も、少し錆びれた歩道橋も、道路の端に立つ真っ赤なポストでさえ。まるでキラキラのエフェクトがかかったように輝いて見える。


好きな人と一緒だと、何気ない日常の景色がこんなにも彩度が高く見えるだなんて感動だ。恋ってすごい。


少し寄り道をして、手を繋いだまま近くの河川敷まで歩いてきた。


時折吹く涼し気な風が気持ちよくて。繋がれた手と手が心地よくて。永遠に歩いていられそうな気がしてくる。


「そういえばずっと言えてなかったんだけどさ」

「うん?」

「髪の毛。短いのもすごく似合ってる」


柊くんの視線が肩先で切り揃えられた私の髪へと向けられた。地区大会前の四月下旬、鎖骨くらいまであったセミロングの髪を肩先程の長さのボブへとばっさり切った。


柊くんから褒められたことが嬉しくて、自然と頬が緩む。


「ふふ、ありがとう。けど、お団子はまだできなさそうなんだ」

「お団子?」

「うん。柊くん、お団子の髪型が一番好きなんだよね?」

「……どうして?」

「前にね、大河原くんが教えてくれたの。柊くんの好きな女子の髪型はお団子だって」
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