日々、アオハル
付き合い始めは初々しくも、ぎこちない空気が漂っていた。だけど最近はより恋人らしく、距離が縮まってきたなとは思う。
朝は毎日同じ電車で通学して、放課後は最低でも週に一回は会うようにしている。
呼び方も、"柊くんと羽森さん" から "世那くんと雛夏" に変わった。
『ねえねえ柊くん。お互い名字呼びだとなんだか距離があるように感じちゃうから、呼び方、変えませんか?』
呼び方を変えようと提案したのは、私からだった。
『うん。実は俺も言おうと思ってた』
『ほんと!私のことは "ひな" でも、"ひなちゃん" でもなんでも大丈夫だよ』
『……雛夏じゃダメ?』
『えっ、』
『……ごめん。じゃあひなで、』
『ううん、違うの!普段、友達にも家族にも "ひな" って呼ばれてるから、それが当たり前になっちゃってて…。雛夏って呼ばれるのが新鮮でドキっとしちゃった。雛夏って呼んでくれる人は他にいないから、すごく嬉しい』
『それなら余計、雛夏って呼びたい』
『うん! 私はどうしよう。世那、くん……かな?』
『うん。俺のこと、世那くんって呼ぶ人も羽森さんだけだから』
『え、そうなの?……女の子から呼ばれない?』
『女子は皆、柊くん。ていうか、羽森さん以外には名前で呼ばせない』
『っ、じゃあ、世那くんって呼ぶ!』
『うん。俺も雛夏って呼ぶ』
あれから二週間ほど経つけど、"雛夏" と呼ばれる度に胸がドキドキしてしまうし、"世那くん" と呼ぶ度に胸がくすぐったくなってしまう。
私だけこんなことになってるなんて世那くんに知られるのは恥ずかしいから、これは私だけのひみつだ。