日々、アオハル

「(あ、その顔、好き…)」

 
悪戯な笑みがかっこよくて、眩しくて、足から崩れ落ちてしまいそうになる。


「自慢してくれるの、嬉しいな」


少し俯いて、そっと声を落とした。


心の中で悶える私を知る由もない世那くんは、それぞれのバッグに付けられた2匹のビションを交互に見ると、今度は穏やかな表情で笑った。


「お揃いって、けっこう嬉しいね」


追い討ちをかけられてしまった。

 
世那くんと同じものを持っているというだけで、それだけで十分嬉しかったのに。


世那くんも私と同じように ''お揃い'' を喜んでくれていることが、同じ気持ちでいてくれていることが、すごく嬉しい。


「世那くん」

「ん?」

「これからもお揃いのもの、増やしていこうね!」


嬉しいが止まらなくなって、満面の笑みが零れた。


「……。」


笑顔全開の私に反して、世那くんはすっと表情を消した。心の中で「あれ?」と動揺していると、伸びてきた手が頭の上にポン、と乗せられた。


「かわいい」

「……へ、」

「かわいい」

「あの、世那く」 

「かわいい」


まるで壊れたラジオのよう。食い気味に ''かわいい'' を繰り返される。頭の上に乗っていた手が下へと降りてきて、肩先までの髪を優しく撫でられた。更に下降していく世那くんの指先が、私の指先を捕らえた。


「外でもそんなにかわいいの、ほんと、勘弁して」


絞り出すような声だった。


撃たれたように、胸が苦しくなる。


「(世那くんだって、外でもそんなにかっこいいの、勘弁して、)」


その言葉は音にならず。唇をきゅっと結んだ私は、壊れたロボットのように、ひたすらに瞬きを繰り返した。
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