日々、アオハル
左上に置いていた目線を正面に戻した世那くんは、「あー、そうだ。懐かしいね」と小さく笑った。
「本当に甘いものが好きなんだね」
「うん。けど、あの時甘いものばっかり頼んでたのは気合いを入れるためだけどね」
「え?気合い?」
「俺、昔から大事な試合の前に甘いものを飲むようにしてるんだ。そうすると気合いが入るから」
'' 柊くんに気合いを入れてもらうには甘いもの ''
新人戦の時、水戸さんが後輩の子と話していたことを思い出した。
「あの時、雛夏と二人きりで話すの、めちゃくちゃ緊張してたんだよ」
世那くんからの思わぬカミングアウトに、「えっ」と声が漏れた。
「だから気合いを入れたかった。ちゃんと話せなかったらダサいし」
気まずそうに苦笑いを浮かべる世那くんは、もう一度チョコシェイクを口にした。
「う、うそ……」
「ほんと」
「私はものすごく緊張しちゃってて、全然上手く話せなかったの。けど世那くんは全然緊張してるようには見えなかったよ」
「緊張しないわけないよ。片思いしてる子と急に二人きりになったんだから」
「っ、」
照れたように目を伏せてアップルパイを齧った世那くんは、「付き合えて本当によかった」と緩く目尻を細めた。