日々、アオハル
「そうなのっ!三春先輩のナイスピッチングを後押しできるように、最高の音を届けたいんだあ」
勢いよく起き上がったふーこは先ほどとは打って変わって、キラキラと目を輝かせている。
「ていうかあ、安曇だって彼氏が野球部なんだから気合い入ってるくせに〜!」
「残念ながらうちの彼氏はベンチだから。期待できるとしたら来年かな」
同じ中学出身だという2人は、県内でも強豪として知られている吹奏楽部に所属している。
安曇梨乃であっちゃん。風谷梨子で略して風子。1年生で同じクラスになった2人のことを私はそう呼んでいる。
梨乃と梨子、名前が似ていてややこしいという理由で、2人はお互いを名字で呼び合っているらしい。
ふーこは野球部のエースピッチャーでもある三春先輩に密かに想いを寄せていて、あっちゃんは同じ2年生に野球部の彼氏がいる。
吹奏楽部と野球部の恋なんて、まさに絵に描いたような青春だ。
「なんかいいな、そういうの」
ぽつりと呟くと、2人の視線が私に集まった。
「ひな?」
「えーん、なになにひな。どうしたのお!」
深刻めいて言ったつもりはないのだけれど、正面にいる2人は心配そうな顔で身を乗り出している。