日々、アオハル
驚きすぎて声も出なかった。
口を「え」の形で固まらせ目を丸める私と同じように、柊くんの目も丸まっていた。
柊くんと目が合うのは、これが2回目。しかしそれもすぐに逸らされてしまう。
すうっと目を細めた柊くんは隣に立つ大河原くんへと顔を向けると「まじでふざけんな」と溜息交じりに声を落とした。
そんな柊くんを気に留めることなく「はいはい」とあしらう大河原くんはやけに笑顔で、2人の表情はまるで対照的。
それはさっき私へと向けた爽やかな微笑みとはまた違った、含みのある笑みだった。
私は一体どうすればいいのか…。1人ひやひやしながら戸惑っていると、柊くんの身体が前方へと動いた。
柊くんの両手を背後から抑えながらテーブルへと距離を縮めた佐野くんは、私の正面、さっきまでふーことあっちゃんが座っていた席へと柊くんを素早く押し込んだ。
そこからの4人の動きは、異様に早かった。
「俺ら急がないとだから。じゃ」
「えっ、」
「申し訳ないけどこいつのことよろしくね」
「あの、」
柊くんの肩をポンと叩いた佐野くんを筆頭に、全員が全員同じ笑みを浮かべながら、私に小さく頭を下げて去っていく。
数分の間に起きたこの状況を理解できていない私は、嵐のように来て嵐のように去っていく4人の背中を只々呆然と見送った。