日々、アオハル

「……」

「……」   


目の前にはテーブルの上に両肘をつき、首を垂れる柊くんの姿。


「(これってきっと、罰ゲームかなにかだよね……)」


柊くんはずっと険しい表情をしていたし、他の4人はやけに楽しそうに笑っていた。


ようやく脳みそがこの状況を理解し始めたところで、1つの予想が浮上する。


うちの部活でも賭けに負けた人がちょっとした罰ゲームを受けるという男子高校生特有のノリをよくやっている。


きっとそうだ、それしか考えられない。と予想が確信へと変わっていくにつれ、胸が小さく痛みだす。


罰ゲームの相手にされてしまったということはもちろん、目の前で項垂れている柊くんの態度にも悲しさを感じてしまう。


憧れの人が目の前にいるというこの状況。何を期待していたというわけではないけれど、僅かに胸を躍らせていた自分が恥ずかしく思えてくる。


「あの……、私、場所、移動しますね」


ノートやペンケースをバッグの中へとしまい、店内の奥にある1人がけの椅子に移動しようと、立ち上がって声をかけた時だった。


勢いよく上体を起こした柊くんの右手が、私の左手首を掴んだ。


「えっ」

「ごめん、行かないで」


至近距離で見上げられ、思わず息を呑んだ。


触れられている部分から熱が伝わるほど、その右手は異様に熱かった。
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